【進行C10】泣き虫ビューイ。

エリオールが虹色の閃光に包まれた数瞬後、
その衝撃から各々が目覚めた始めたその時。
ふぁぁぁぁぁ...
それはそれは盛大な生欠伸が鳴り響いた。
その余りの緊張感の無さに、何人かは腰砕けた事だろう。
「...竜は、目覚めました」
何時の間にか伯爵達の近くまで戻ってきたミナが宣言した。
そう、鼾では無い。欠伸だ。
「...と言う事はつまり...」
その場に居た誰かが呟いた。
ぬおおおおおっ
夕闇を背に、ゆっくりと巨大な影が起き上がる。
朱に染まる視界が、闇に閉ざされる。
『アアアアアアア、ヨゥク、寝タナア...』
圧倒的な声量を誇りつつも、巨躯に似合わず何処か垢抜けない声質。
発せられたのはリザードマン語であった。
―――こうして【泣き虫】ビューイは、数百年の眠りから目覚めた。
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『.........』
ビューイはその長い首をゆっくりともたげ、周囲を見回した。
目は半開きで、口からはだらしなく涎が垂れている。
『.........』
どうやら、まだ意識は完全に覚醒していないようだ。
状況の把握を、一生懸命にしている様にも見える。
『.........、!?』
表情が一変した、ように見えた。
瞳孔が開き、口が大きく開かれる。
『此処ハ人間ノ...街...何デ?』
そう呟くと、大粒の涙をぼたぼたと流し、嗚咽した。
『苛メナイデ、苛メナイデヨォ!!』
頭を抱えてうずくまる。
最強の生物たる竜の情けない姿に、一同はただ唖然とするしか無かった。
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『...そうか、僕はまた、戻ってきたんだね...』
最初にビューイに話しかけたのは誰であったか。
人間との会話に際し、ビューイは下位古代語に言葉を切り換えた。
この辺り、見た目と性格はアレでも、
知性は老竜にふさわしく豊かなのが証明される。
『僕をよってたかって苛めた
カストゥールの奴らはもう居ない。
だけど、エルミナートもディーノも
ハルディオも居ない...』
挙げた名前は伝承に残る友好的な魔術師達の名前だろうか。
ビューイは意気消沈といった様子だ。
『僕には友達が居ない...
皆僕を恐れるし、せっかく仲良くなっても、
皆先に死んでしまうんだ』
背中を丸くして首を落とす。
この言葉には、深い悲しみが滲んでいた。
『それに、僕のせいで街をこんなにしてしまった』
ビューイはますます縮こまる。
「そうだ!この落とし前をどうしてくれる」
「償え!死んで詫びろ」
「お前さえ居なければ、お前さえ居なければ!」
ビューイが気弱だと分かって気が緩んでか、
市民達はこぞってビューイを一斉に非難し始めた。
先刻のミルの説得も眼前の怒りですっかり吹き飛ばされた格好だ。
『う、うぁぁぁぁぁん!
ごめん、ごめんよぉぉぉぉぉ』
ビューイは滝のように涙を流し、泣き伏せる。
そのやかましさたるや凄まじく、それがまた市民の激情を煽る。
「ほ、本当にはた迷惑な奴だ!」
「出て行け、一刻も早くこの街から出て行け!」
市民達は怒りに冷静さをすっかり失い、再びビューイに詰め寄らんとする。
『ひ、ひぃぃぃぃ』
ビューイが頭を抱えてうずくまる。
冒険者達は、この状況にどのように行動したであろうか?
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【GMより】
ビューイが目覚めてから再度市民が暴発寸前になるまでです。
[各種判定結果]
今回は無し!
[備忘録]
○1ゾロ
アイナティート:2回
マーク :1回
ナリス :4回
ジュリア :1回
ミル :1回
マーク :3回
○撃破
ナリス :オーガー1体50点、ゴブリンロード1体40点
マーク :ゴブリン4体80点
○支払い
アイナティート:60+60ガメル
ストレイ :100+60+50ガメル
ミル :50ガメル
○収入
ミル :120ガメル
追加報酬 :総額3900ガメル
○消費
ミル :羊皮紙2枚
ストレイ :「仕事」用の地図、被害状況の地図
ライス :ダンマルク伯爵宛の紹介状
○入手
ストレイ :『星』の欠片、森の地図、竜の鱗
ジュリア :竜の鱗
アイナティート:竜の鱗
ミル :竜の鱗
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