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市民と竜と

アイナティート [2014/01/04 14:01]

結局。
 町へと戻ってきた我々は竜を起こしたのであった、まる。


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 虹色の光の後、寝ていた竜は欠伸とともに起き上がった。
 うーむ、大きいな。弛んでるせいで余計にそう見える。
 そして奴は、私には理解できない言語(だと思う)で何事か呟いた後に頭を抱えて泣きだした。
 これはひどいというか、本当に泣き虫なんだなこいつというか。言葉が見つからん。

『...そうか、僕はまた、戻ってきたんだね...』

 しばし後、奴はまともな理性を取り戻したようで古代語による会話を行ってきた。
 ふん、それなりには賢いようだな。太っていても泣き虫でも、竜は竜と言ったところだろう。
 だが、余りにも......こう、弱いというか何というか。
 単独で無敵の力を持つはずの竜でありながら友を求め、その友が死ぬことを嘆く。
 単純な性格としては、人(私はエルフだが些末事だろう)にとり好ましいものだろうが。
 挙句の果てに、

『それに、僕のせいで街をこんなにしてしまった』

 なんて縮こまる竜など前代未聞だろう。
 そして......、

「そうだ!この落とし前をどうしてくれる」
「償え!死んで詫びろ」
「お前さえ居なければ、お前さえ居なければ!」

 などと竜に言う輩も前代未聞だろうな。

 泣きながら謝り続ける竜に、それを怒り続ける人。
 どうにもあべこべな情景に見えるそれは、珍しさこそあれ決して愉快なものではない。
 いや、というかはっきり言って不快だ。腹立たしい。冒険者風にもっと砕いて言うなら『ムカつく』。

「ガタガタ、ルセぇ・・・。
 いけすかねぇ・・相手が弱気と見れば、まくし立てる・・。
 てめぇら、誇りってもんがねぇのか!!」

「あー、まぁ取りあえず落ち着きんしゃい、お前さん達。今のお前さん達には生物として当然の本能、すなわち"危機感"が足りちょらん。いいか?いかに後ろの肉の塊が情けない奴だとしても、それがお前らより弱いということでは決してないんよ。

"こいつを刺激するな"こいつは、ただの竜じゃない。エルダードラゴンなんだ。

お前らにできることは突発的な災害に巻き込まれたと思ってただ黙って、こいつが去っていくのを見送り、今までの日常に戻ること。どうだ、簡単だろう?それが俺たちか弱い人間のできることさ」

 ストレイやナリスもこの様子を座して見るつもりは無いようで、良かった。
 これを放っておくような奴は余り好きにはなれなそうだからな。
 そして当然、私も怒りを表すことを止めるつもりはない。

「喧しいわ貴様ら!」

 だから、思いのままに口を開いて怒りを叫んだ。怒耳天を衝く状態だ。
 もう二度とこんな町に来ることが無くても構わない、それくらいに不愉快なのだ。
 他の冒険者との話で得た悪口の語彙だってフル活用してやる。

「さっきから聞いていれば何だそこの阿呆共!
 償いだと?落とし前だと?寝ぼけたことを言っているのはどの口だこのノータリンのボケナスが!
 この竜はただ落ちてきただけで、眠りから覚めることさえなかった......否、出来なかったのだ!
 そんな状態の者に良くもそんな......!」

 まあこの竜は自ら眠りを選んだのかもしれんし、当時の私も割と怒ってはいたがそれは置いておく!どうせ重要なことではない!
 ええい、いい罵倒の言葉が浮かばん!

「とにかく、こんな哀れで泣き虫な大蜥蜴をさんざんぱら罵倒するその心根が気に入らん!
 私はなあ、弱い者いじめというものが大・大・大......っ嫌いなんだ!」

 そしてすぐに竜を向く。
 市民共もそうだがこいつもこいつだ!

『大体、貴様もだ!泣き虫大長虫のビューイめが!
 友がほしいのもその死が悲しいのもいいがな、一々泣くな鬱陶しい!泣くなら泣くでもっとここぞという時に泣かんか!
 貴様の声はものすっごく喧しいのだ!私の長い耳には特にな!そうホイホイ泣かれてはたまったものではない!
 大体竜である貴様が人間ごときに詰め寄られて泣くとはどういう了見だ!泣き虫ではなく怖がりにでも改名するか!?』

 一息つく。

『......優しさは美徳だ、だが貴様のそれは優しさのみならぬ、怯懦であり、弱さだ。泣いてばかりで事態が解決することはない。
 貴様には泣く以外に出来る事がいくらでもあるだろう、エルダードラゴン。
 貴様の古代語魔法も、竜語魔法も、そしてその巨大な体も。人間には出来ぬことを容易に成し遂げられるはずだ。
 人を傷つけたことを嘆くのもいいだろう。だがそれに終始してはならん。償いをしたいのなら、それは貴様がしっかりと行うべきだ』

 言ってる内に落ち着いてきた。そして冷静に考えて自分がどれだけ危険なことを言ったかに気付いた。
 エルダードラゴン、国一つを滅ぼしうるであろう怪物に、説教じみたことをしているのだ。
 ......うむ、私ってスゴイな!流石私だ!

『......と、まあ、なんだ。うん、あれだ!そんな感じだ!頑張れ!
 貴様だってここでそのまま去ってもすっきりしないだろうからな!』

 なんというか感情が纏まらなくなってきたので強引に話を切り上げる。
 マークの提案も良さそうだが。根本的に市民には危機意識が足りんと思うし。
 それに、ドラゴンのブレスって格好良さそうじゃないか。

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PL:配管
いえーいおっそーい!ごめんなさい!
暴走文句垂れ流しはアイナの十八番。多分。
このまま喧嘩別れだとビューイも可哀想かなって