語り始め

「語る」という現象において、話し手は語るに先立って考えるのではない。話す間に考えるのですら無い。語るということが考えることなのであるという。
だとすれば私の考える力ははなはだ程度が低いと言わざるを得ない。
「モーリス・アバックです。よろしくお願いします......」
今回の依頼の同行者に自己紹介する時に、この程度の事しか言えなかったのだから。
同行者エーリアンは歳が近そうであったが、快活そうな男だった。快活な男は嫌いではない。むしろこちらが無口なので相手が退屈しないか心配だった。いや、きっと退屈だろう。だからといってその問題に対する解決策は思いつかなかった。開き直るしかない。無口で退屈な男、これが私である。
さておき、今回は仕事で温泉街ノートンに来ている。簡単な配達の依頼だ。
何事もなく手紙を配達し終わり、返事を受け取った。あとはこれをオランに持ち帰り依頼人に渡せば仕事は完了である。
その日はせっかくなので温泉に浸かることにした。まだ疲れが溜まるほど働いてはいないが温泉はよいものである。
「きゃああああああああっっっ!!!」
......その時だった。
女性浴場のほうから絹を切り裂くような悲鳴が聞こえたのは。
こういうことが気になる程度に神経質な私は、このままではゆっくり湯に浸かることもできない。
「どうしました! 何かありましたかッ!」
ルールはとりあえず守る主義の私は女子更衣室の前から大声で呼びかけた。
周りに女性がいれば、中に入って見てきてもらえれるよう依頼したいところだが。
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PL:
騒ぎを大きくするよう仕向けて人を集めます。
ここで女湯に入って袋叩きにされる展開を期待されてもどこ吹く風です、すいません。
まだ着衣のままですよね。武具は持ち込んでないとは思いますが。
買い物:
水袋・マント・羊皮紙(10)・インク/羽ペンを買います。75ガメル消費。