弱者の営み
モーリス
[2014/12/08 19:14]
他者に善を行うことは、己に悪を行うことになる。
何故なら無償の奉仕を求めるものは世の中に多く、その上かれらの必要は簡単には満たされないからだ。
一に応えれば十に応えるよう求められ、十に応えれば百に応えるよう求められるようになる。
応え続ければ、己を傷つけ疲弊させる悪となる。
私は人の醜さと弱さを知っている。
いかなる人間にも、注意を払わねばならない。
私自身も弱いのだから。
生きることに余裕などない。
――だが、それも場合による。
他者に奉仕することによって糧を得られるのならば、奉仕の内容が可能な場合、それは好機であったりもする。
糧を得なければ自由を失う。得られるうちに得ておくに越したことはない。
今回の場合――
もれなく協力者が一人いる。好条件。
そして依頼人。
形見の品を失い、動揺している。これはこちらに弱味を見せたということになる。これは交渉において有利であると考えることができる。
......善いだろう。
「エーリアン」
私は圧力と言ってもいい笑顔を向けてくる仕事仲間に応える。
「鼻毛が出ていますよ」
本当に出ていたわけではない。
エーリアンをあしらっておいて、依頼人――コンスタンツという女性に向き直る。
「しかるべき報酬を払っていただければ、私にはあなたのために働く用意があります。
失われた品は大切な品だったのですね。お父様の形見ですか。ならばさぞかし大切なのでしょう――。
それは解りますが、気に留めておいて頂きたいことがあります。
今回の場合、貴女は命の危機にある。毒を盛られていたわけですから......今回は助かったが、これから犯行がエスカレートしないとも限らない。
失せ物探しという、簡単な仕事では済まない。貴女自身の護衛もしなくてはならない。何しろ毒を使う相手です。容易い相手ではありません」
脅すのはこれくらいでいいだろう。
「1000ガメルといった所でしょうか。
成功報酬で構いません」
相手に『金で雇った』という形を提供する。その方が働かせるのに気が楽だろう。かつ報酬以上のことはしないという予防線を張ることもできる。
......話がついたら、これも確認しておく。
「衛視さん。
この街で古代語魔法の行使は認められていますか」
PL:
私もモーリスも善人になる気は毛先ほども無い!
(言いたいことを言えるって気持ちいいなあ)