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湯煙回顧録

エーリアン [2015/01/29 11:20]

浴槽の段差に、ゆっくりと腰掛けて温泉を肩にかける。
こうすると血行を良好な状態へ保ったまま快適に体温を高めることができるのだ。

しばらく、腰下だけを浴槽内に置く半身浴の状態で居ると上半身も程なく温まった。
首元に手をやると、かすかに汗をかいている。

これが快適な入浴のサインだ。
段差を降り、体を首元まですっぽりと沈める。

「ふぅぅぅ...やーれやれだぜ
やっとこさこうやってゆっくりできる...」

温泉は程よい温度で、非常に快適だ。
色々と奔走したあとの風呂だもんで、余計に気持ちがいい。

俺は、全てを終えた後、念願の温泉でくつろぐため再び浴場を訪れたのだ。

「あー...いい湯だ。
ババン バ バン バン バン ってなもんよ」

湯をすくい顔を拭うと温泉の独特な臭いを感じる。
何だったかな精霊力とかだそうだが、さっぱり門外漢な俺にはよくわからないが
なんかの成分があるそうだが、まぁ気持ちいいんなら細かい理屈はどうだっていいか。

「ううむ...ノートンに来るでもいろいろあったが
来てからもいろいろあったな...噂じゃ俺らの他にも冒険者が来てたって話だし
ここも存外騒がしいとこなのかもしれねぇ...隠居先にいいかと思ったんだがなぁ」

以前考えた、金がたまったらノートンで隠居。
というアイデアは計画性も何もないが、悪く無いと今も思っている。
だが、あんまり騒がしいようなら別の場所を考えたほうがいいかもな。

俺は湯に浸かりながら、ここノートンで起きた騒動を想起する。

俺達はここ「ノートン」へと荷物を輸送してきた。
受取人の先生が、好意で宿泊先を貸してくれるってなもんで俺たちは好意に甘えて
この温泉までのんびりとやってきたわけだ。

しかし...問題ってのはどこにも起きるもんだ。

俺達が温泉に到着するとまず最初に待っていたのは、温かい湯ではなく女性の悲鳴だった。
あの時は大慌てだったっけな...慌てふためいて女湯に飛び込む羽目になっちまったのは
ちょいと、焦りすぎだったか...まぁ、今じゃ笑い話か。

その悲鳴は、女湯に女性がひどい状態で倒れているというものだ、
俺は医学に少しばかり縁があったため救護にあたることになる。

女性は毒により意識を失っていた。
だが、俺は毒を癒やすすべなど持ち合わせていなかった。
急いでどこかの神殿に駆け込む必要がある。そう判断した俺は女性を持って外へ出た。

今思うと、なかなかにタイミングが悪い...なぜなら出た先に衛視が通りかかったのだ。
俺は急いでるのと身の潔白を証明したい気持ちで、かいつまんで話したが
最終的に、モーリスがフォローを入れてくれたおかげで話がまとまった。
サンキューなモーリス。

衛視とともに、チャ・ザの神殿へと駆け込んだ。
そこの司祭は信仰の確かな人物のようで、軽々と毒を取り除いてみせた。
俺もいつかあんな風なことができるのだろうか?

だが、今の俺は信仰というものを深く理解はしていない。
一節には、神を信じ委ねることが信仰。だそうだが、本当にそれが信仰なのだろうか。
何にせよ、俺とチャ・ザ神が距離を縮めるには少し時間がかかりそうだ。
それなりに気が合うとは思うがね。

「ふぁぁぁぁ...温泉ってのは考え事にも向いてるのか?
色々考えちまうな、悪いことじゃないけどな」

さて、命を取り留めた女性は「コンスタンツ」と名乗った。
彼女は、宝石をノートンくんだりまで運んできたそうだが、
温泉での一件の際宝石を紛失してしまったという。
だが俺達は冒険者だ、依頼という形で彼女の宝石を取り戻すという契約を結んだ。
本音では困ってる人を見捨てるのは心苦しいというのもあるが、余り公に言う気はないな。
..なんかむず痒くてな。

詳しい話を聞いた俺達は調査に乗り出す。
俺がちょいと居眠りしちまうっていうトラブルはあったが、概ね問題なく調査は進み
その結果、調査によって、インプという生物が関わっていると考えられる証拠と
それを使役する暗黒神官の影が見え隠れしだす。

さぁ、次はどこを調査するか?
そんなことを考えていると、あのが聞こえた。

「...実際よぉ、神様の声を聞いたっても幻聴か何かと思っちまう
しかし...だ、明らかに今までの自分と何かが違うような感覚...
それに加えて二回もを聞いちまったんじゃ、信じるしかねぇか」

髪をかきあげるように首元に手をやると、を聞いた瞬間がフラッシュバックする。
波だった湯船が、夢を見ているわけではないということを自覚させた。

に導かれるように、野道を行く。
すると悲鳴が聞こえた、あの声は間違いない...コンスタンツのものだ。
俺達はいっそうに足を早めて声のもとで全力で駆けた。

よく覚えている、きれいな月の夜だ...
崖から見える海はすべてを飲み込んでしまいそうに深い色をしていた。
そして、怯えたコンスタンツとイヤな雰囲気の野郎に目当てのインプがそこに居た。

不穏な雰囲気だ、それに加えコンスタンツが助けを俺たちに求めてきた。
だったら...やるこたぁ決まってるよな?

俺達は一意に突撃をかけた。

「あの戦いは、我ながらうまくやったもんだ。
モーリスがインプを叩きのめした時はびっくりしたけどな!
格闘も出来るって聞いてたが流石と言っておくぜ」

あの戦い、俺達は実にうまく立ちまわった。
途中、暗黒神官の野郎が妙な魔法(?)を使いやがったが、
モーリスの施した魔法の前には型なしといったところで一切の影響を受けなかった。

初仕事の時と違って、全身血まみれにならなくて済んだのはかなりいい感じだ。
チャ・ザ神が見守ってくれたりしたのだろうか?

何にしても、この依頼も完璧に終えることが出来た。
これも腕の良い相棒が居たからか、勿論俺も役に立った!と思う。

「何にしても、めでたしめでたしっってな!」

俺は湯船に体を投げ出し、盛大に寛げるだけ寛ぐことにした。
この事件は集結したが、明日からまた別の依頼が待ってるんだからな。

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PL・温泉に入りました!

エーリアンは温泉に入りながら、ぼんやりと思い出している感じです。
色々喋ってますが、モーリスと話してるのかもしれないし、独り言かもしれません。