Sword World Web 5 セッションサイト

旅の仲間

ミル [2014/11/18 16:20]

その悲鳴を聞いたのは、村に入ってまだ何歩も歩いてへん矢先やった
当然、やぶからぼうの荒事に向かう心の準備なんてあらへんし、仲間達かて、それは一緒やった思う

「ぎゃああっっっ!!」

「助けてくれえっ!!」

その悲鳴は大勢のもんで、それだけにタダゴトやないってことがすぐわかる

「いきなりかよ......」

警戒心と非常の心持ちを慌ただしく呼び起こしながら、ウチは右手の薬指にはめたパリーパリーの感触を確かめた

 

 

 


依頼を受けたのは数日前のオラン
角無しミノタウロス亭のエントランスで昼間っからエールを流し込むなんて贅沢してたとき、よりによって賢者の学院からの使者を迎えることになった

盗賊と魔術師っていう、立ち回りに気をつけへんと二つの組織から厄介者扱いされかねん立場上、呼び出しにはすぐ応じるしかない
果たして、ウチを呼んだのは冒険者の経歴を持つ行動派、ヴィステリア導師
どうも、キナ臭い
集められる面子の濃さが危険な感じを、ぴりぴりと運んでくる

ウチは、思うところあって、学院への道すがら、自分自身居場所のいくつかを持つ貧民靴へと足を向けた

 

 

 

ひどい目に遭った、てのは噂で聞いていた
死にかけて、事件から放り出された、と

せやから彼の生活が荒廃してるであろうことは、あらかじめ予想はしてた

暗い部屋
酒の空き瓶

その向こうでうずくまる、相棒の影

「ヴェン」

返答を待たず、彼の部屋の中に無断で立ち入って、ごみを蹴り飛ばしながら窓辺に立つ
カーテンを空け、雨戸を開け放ち、空気の入れ換えを行う

差し込んできた光を背に、ウチは暗がりにうずくまる、かつて何度も背を預けた威丈夫を見下ろした

「仕事や」

まだアルコールの抜けきらない様子のヴェンに、ウチは告げる

「どうも、ヤバいヤマが舞い込んできた
 ヴェン、自分の長モノの力を借りたい
 一緒に鉄火場、踊ってくれるか?」

ウチは、死線にあって死角を任せられる人間を彼意外にはそう知らない

「いつまでもこのままってわけにもいかへんやろ?
 その腕前、また借りたい」

それだけを伝え、賢者の学院、ヴィステリア導師の名前をメモして、彼の眼前に添える

「酒抜いて、待ってる」

たしかに一方的
けど、この男の復帰には、それだけで充分やろうと勝手に決めた

 

 

 

ウチと同じく招集されたのは、せやけど必ずしも魔術師ギルドの関係者ばかりってわけでもない
むしろ普段学院に係わりのない凄腕の面子が並んだ現場を見て、ウチはあらためて導師の本気度と、事態の深刻さを悟った

エストン山脈山麓で、凶暴化した動物による被害甚大
一聞したかぎりでは、よくあるただの討伐ミッションって話なのやけれど、複数の領内からの訴えは深刻で、国が腰を上げたって話を聞き、ウチは少し暗然たる思いに囚われた
そういう大きなヤマは、柄やない
せやけど話を聞いてもうた以上、廻れ右するわけにもいかん
なんせ、一般の民衆が危機に晒されとるって話や

招集されたメンバーが揃い、しばらく皆で依頼の概要を聞いていると、戸が開いた
......待ちかねた男が、入室してくる

「よ」

黒い鎧が、かつての戦いを思い出させる
帰ってきたヴェンに、ウチは軽い視線だけで答えた

本当の意味での全員が揃い、打ち合わせを完了する


>「ミル君、ヴェン君。期待しているよ」

名指ししたヴィステリア導師の言葉には、信頼感と切迫感が同居してたように思う
以前から導師とはいくらかの面識があるし、その折の立ち回りがこの起用に繋がったのやとしたら、ありがたいやら、困るやら

集まった面子は、合計五人

オラン随一の精霊使いとして名高いグリーンリバー、戦士として一緒に野山を賭けたバーラー、あの悪魔退治でヴェンとウチの盾となって奮戦した少女ドワーフ、レゾナンテ、そして、くさってたところを半ば強引に叩き起こした、ヴェン

この面子を見渡して、まずウチの脳裏には安心感やった
誰をとっても、おそらくオランで集められるメンバーとしては上級の部類になる
彼らになら、どんな脅威でも背中を預けられるやろう

せやけど次に浮かんだのは、まんまるいっぱいの、漠然とした不安やった
精鋭
間違いない、この面子
そんなら、それを集めたヴィステリア導師の真意は何か?

『この面子』でなければ対処不能、としたっていう、切迫感を、ウチはひしひし感じ取った

「......民間に被害出てるなら、是非もあらしまへん
 がんばります」

とまれ、そう言うしか他に道はあれへん

事件の詳細を聞き、一旦旅支度に戻ったミノタウロス亭で、ウチは不安感を振り払うようにして、皆に声をかけた

「グリーンリバー、よろしく!
 この面子じゃ自分が最特級や、頼りにさせて貰うな
 足だけは引っ張らんよう気をつける
 あっははは、なに、ヤバいの殴ってきたら最後の盾くらいにはなるよ
 その間に、自分が戦場ひっくり返してくれんの待つからさ」

「バーラー、戦列組むのは山以来やな
 知ってのとおり、ウチは野外活動はずぶの素人や
 野山での耳目は専ら自分ら頼りになる
 苦労かけるけど、頼らせてな
 みんながなるべく怪我せんよう、ウチも考えて魔法使う
 今回、員数は多いし、負担も山分けしてこーね」

「レゾ、久しぶりやなあ
 この面子じゃ自分が唯一の癒し手やし、後衛の壁や
 頼る部分も多くなるやろけど、堪忍な
 また前みたく、出番ならいくらでも食ってええからさ
 命綱預けた」

そして、どうやらいくぶんかでも生気を取り戻した様子の、相棒

「ヴェン、酒は抜けたか?
 来てくれておおきに、正直、今回も組めて嬉しいよ
 生きて帰ってまた呑もうな
 楽しい酒なら、なんぼでも付き合うで?
 がはは、ってヴェンの高笑い、期待してっからね」

うーん、自分自身、出っ鼻からかなり悲観的になってるな、て思う

せやけど、今回はこれでええ
こないだ出かけた海の冒険で、自身のうかつさはたっぷり思い知ったさかい

出立の報告のため、再度学院に出頭する
そこで、ヴィステリア導師から更なる詳細を聞き込んだ

「はあ、人が、変わる?」

凶暴化するのは、動物や妖魔に限ったことやないらしい
てか、人間の外見が変わってまうってのは、一体全体どうしたことや?

ウチは、導師と細かい照会を行った

 

 

 

そっからみんなで山道を旅すること数日
温泉があるって話の宿場町を過ぎて二日

「温泉かあ......
 バーラー、レゾ、帰りしなにでも寄ってかへん?」

女衆みな、まだまだ若い、玉の肌
湯気で磨いても損はあるまいて

そんな話をしながら、やがて到着したのが、小村トレンド

そこでウチらを出迎えたのは、村人でも村長でもない、緊急事態を告げる悲鳴

「と、いきなりかよ」

ウチはぼやきながら、導師や仲間達と相談した、あの形態変化のことを脳裏に浮かべて走り始めた

 

 

さて今回は、どんな顛末になることやら
せめてよりよい、結実を目指して

ウチは肩の迅鉄の毛を、軽くなでた

---------------------------------------------------------------------------------------------------

初回投稿は、少し長めにするのが最近のクセだったりします^^;

ヴェンがフレーバーっぽい立ち上がりだったので、のっかってみました


始まりましたね、のっけからいきなりの鉄火場!?

危険度高いミッションは久しぶりなので、暗然最優先で、締めていこうと思います

行動としては

・人の形態変化に関するセージチェック
・悲鳴のあった方に急行

です

危険との接触がありそうなら、次の投稿ででも、早めにプロテクいこうと考えています

いあ@ミル : 形態変化 2D6 → 2 + 6 + (6) = 14 (11/18-17:24:19)

ステータス
ミル HP/MP 14/16
迅鉄 HP/MP 5/5